発電機起動停止モデルを用いた国内卸電力市場の構造分析
要約
# 1. はじめに
- 研究の背景と目的
- 日本の卸電力取引所(JEPX)は2005年4月に開設されたが、2007年度の取引量は国内電力需要の約0.2%に留まっている
- 本研究では9電力会社の限界発電コストを推定し、JEPX取引価格の妥当性を検証
- 理想的な市場における取引ポテンシャルを推計
# 2. 発電機起動停止モデルの開発
- モデルの特徴
- 9電力会社の発電所と販売需要を対象
- 時刻単位での発電所運用をシミュレーション
- 総運転費用(燃料費・運転メンテナンス費)を最小化
- 対象設備と制約条件
- 火力発電所:403ユニット
- 原子力発電所:55ユニット
- 揚水発電所:42ユニット
- 一般水力発電所:電力会社エリア毎に集約
- 連系線容量や送電ロス、運転予備力も考慮
- モデルの限界
- LNG調達の柔軟性を過大評価
- 燃料調達制限や地理的制約は未考慮
# 3. 9電力会社の限界発電コストの推定結果
- 主な発見
- LNG火力保有会社と非保有会社でコスト構造が大きく異なる
- 価格帯によって9社間の限界発電コストの大小関係が変化
- 燃料価格上昇の影響で年度毎にコスト水準が上昇
- JEPX価格との比較
- ピーク期間(15円/kWh超):JEPX価格が限界発電コストを大幅に上回る
- その他の期間:価格差は縮小し、一部では限界発電コストを下回る
- 年度による傾向の違い
- 2005年度:ほぼ全期間でJEPX価格が上回る
- 2006年度:ピーク期間以外は同程度
- 2007年度:中間的な傾向
# 4. 卸電力取引所の取引ポテンシャル
- 推計結果
- 追加的な取引ポテンシャル:年間約300億kWh(国内電力需要の約3.1%)
- 売りポテンシャルの内訳
- 電力会社:約2/3
- 卸電気事業者・IPP:約1/3
- 買いポテンシャル:大半が電力会社
- 連系線制約の影響
- 東京-中部間、北海道-東北間で市場分断が多発
- マージン開放により年間約20億kWh増加の可能性
# 5. 結論と今後の課題
- 主な成果
- JEPX活用の経済的インセンティブを定量的に示した
- 取引ポテンシャルが現状の取引量を大きく上回ることを確認
- 今後の研究課題
- LNG調達制約を考慮したモデルの改良
- PPS(特定規模電気事業者)を含めた分析
- 再生可能エネルギー普及の影響評価
- CO2排出コストを考慮した分析
評価
# 新規性
- 電力会社の発電所運用を詳細なユニット単位・時刻単位でシミュレーション可能な発電機起動停止モデルを独自に開発
- 非公開データについて、欧州の同型発電機データなど関連情報から適切に推定する手法を確立
- 9電力会社の限界発電コストを時刻単位で初めて定量的に推定
- 卸電力取引所の取引ポテンシャルを初めて定量的に評価
# 言及されている全ての関連研究との相違点
- 経済産業省資源エネルギー庁モデル(2006)と比較:
- より細かい時間分解能(365日×24時間 vs 12ヶ月×平休日×24時間)
- より詳細な地域区分(9電力エリア別 vs 東西日本別)
- より多くの制約条件を考慮(最小停止時間、最小運転時間、出力変化速度など)
- 欧州委員会の市場支配力検証(2007)との相違:
- 日本市場特有の制約条件を反映
- より詳細な発電所パラメータを推定
# 有効性
- モデルの妥当性検証:
- 一般水力・揚水・原子力・石炭発電について実績値とほぼ一致
- LNG火力と石油火力の差異は、現実的な制約要因から説明可能
- 実務的な示唆:
- JEPX取引量拡大の経済的インセンティブを定量的に提示
- 卸電力取引所の潜在的な取引量を具体的に推計
- 連系線制約による市場分断の可能性を特定
# 信頼性
- データの透明性:
- 公開情報の使用を基本とし、非公開データは関連情報から合理的に推定
- 推定方法を詳細に記述
- モデルの限界に関する明確な言及:
- LNG調達の柔軟性に関する仮定の影響
- IPPからの購入量データの制約
- 連系線制約の影響
- 結果の再現性:
- モデルパラメータと計算条件を詳細に記述
- 実績値との比較による検証を実施
- 異なる年度での一貫した結果
和訳
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